孰方いずれ)” の例文
彼はこの話を聞いているじゅう陶器で財をほろぼすことも、痴情をもって此の人のように一生を女のために揉み消すことも、その孰方いずれも結構におもわれた。
陶古の女人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
孰方いずれにしてもそうした方が自分達も安心であるし、本家も同様であると信ずる、あなた方にしたって、胸に何の曇りもないところを写真で一目瞭然りょうぜんと示された方が
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
めい、もう、と互いに鳴き合い、一方が庭へ出されると残った方が暴れ出したほどの仲良さだったのも、孰方いずれもしょんぼりとしている。しかし、山羊と小牛だけではない。
それはお尋ね申さぬでもようござります。だがその御首は何処いずこに、孰方いずれの方角を
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私はこの男がすくなくとも頸部か胸部の孰方いずれかに放射線をあびているらしく、ひどくひふが焼けていることを知ったが、ぎょろりとした眼に人を怖れる容子もなく私の真向まっこうから視線をあびせてかかり