好事者こうずしゃ)” の例文
銘は観賞の上において、さのみ大切のものとは思わないが、好事者こうずしゃはよほどこれが気にかかるそうだ。茶碗を下へ置かないで、そのまま口へつけた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十三歳の時玄機は始て七言絶句を作った。それから十五歳の時には、もう魚家の少女の詩と云うものが好事者こうずしゃの間に写し伝えられることがあったのである。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかるにその出来事は、世の好事者こうずしゃが老僕をだまするために、悪戯をしたのであるとのことだ。世には狐が人をだますにあらずして、人が人をだますことが多い。油断大敵。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
漂着は必ずしもそう稀有けうなことでなく、或る日のアユの風が時あってこれを吹き寄せた例は、日本海の側にもあって、それが好事者こうずしゃの手を渡りあるいたことも、近代は次第に多くなったかと思う。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)