女主おんなあるじ)” の例文
川口屋の女主おんなあるじお直というは吉原の芸妓であったが、酒楼川口屋を開いて後天保七年に隅田堤に楓樹を植えて秋もなお春日桜花の時節の如くに遊客を誘おうと試みた。
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
銀子が初めて不断着のままで、均平の屋敷を訪れた時、彼女は看板をかりていたうちの、若い女主おんなあるじと一緒であった。女主は誕生を迎えて間もない乳呑ちのを抱いていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「おや、みんなやって来たやって来た。」と言う、ここの女主おんなあるじの声も耳に入った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それが今の場合K—自身として、笹村を救う道だと考えていたらしかった。以前下宿をしていた家の軍人の未亡人だという女主おんなあるじと出来合っていたK—は、ほかにも干繋かんけいの女が一人二人あった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お庄はそのたびに弟をつれて、前の主人へ話をつけたり、新しい洋服店へ交渉したりした。今の家は女主おんなあるじであった。その主人はお庄のところへも遊びに来て、一緒に花など引いたこともあった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)