団十郎なりたや)” の例文
事もなげに舞台の奥へ引き揚げていった主水之介を見てとるや、楽屋姿のまま飛び出して、拝まんばかりに迎えたのは団十郎なりたやでした。
だっておめえ団十郎なりたやだって、高田さんにそういったってじゃねえか、九女八あれが男だと、対手あいてにして好い役者だって——だから、お前が、女に生れたってことが
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「えらいことが持ち上がってね」団十郎なりたやは煙草を吹かしながら、「上覧芝居を打たなくちゃならねえ」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
団十郎なりたやと上方くだりの女形おやま上村吉三郎うえむらきちさぶろうの顔合せが珍しいところへ、出しものの狂言そのものが団十郎自作というところから、人気に人気をあおって、まこと文字通り大入り大繁昌でした。
十九年前一歳ひとつの時に観音様の境内に籠に入れられて捨ててあったのを慈悲深い団十郎なりたやが拾い上げ手塩にかけて育てたところ、天の成せる麗々と不思議に小手先が利くところから今では立派な娘形で
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わはは、そうか、そうか、団十郎なりたやめ、心憎い趣向をやりおった。女子おなごがおると思えばおるような、いないと思えばいないようなと申したはこのことか。いや、いないどころか立派な女子じゃわい。
と、不意に団十郎なりたやはいった。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)