団十郎くだいめ)” の例文
白銀のような白髪をオールバックに撫でつけ、団十郎くだいめ張りのハリのある眼に柔和な光を湛え、膝に握り拳を置いてゆったりと語り続けるのである。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
団十郎くだいめのすることの方が好きだから——わかりもしないくせに、高尚ぶってるといわれたりしたけれど、もともとお狂言師は、生世話物きぜわものをやらなかったからねえ。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
あっしがステテコを踊ることになったんで……船の中に派手な三桝みます模様の浴衣ゆかたと……その頃まだ団十郎くだいめが生きておりました時分で……それから赤い褌木綿ふんどしもめんと、スリがね、太鼓
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
団十郎くだいめ張りの張りのある眼に柔和な光を湛え、袴の膝に握り拳を置いてゆったりと床柱に凭れている。山の手の隠居とも見える春風和順の人体だが、何となく底力のある隙のない構えである。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)