くちさき)” の例文
唯一の武器とするくちさきを使おうとするとあまりに窮屈な自分の家はからだを曲げる事を許さない。最後の苦悩にもがくだけの余裕さえもない。
簔虫と蜘蛛 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
水面と金網の上部とがスレスレになると、鼠は薄赤いくちさきを、亀甲きっこう型の網の間から、出来る丈け上方に突き出して、悲しい呼吸を続けた、悲痛なあわただしい鳴声を発しながら。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)