口紅べに)” の例文
百合子の口紅べにが、ラツパについてゐたのを知らず口にして百合子に笑はれた時のことを滝本は思ひ出して何やらヒヤリとする思ひに打たれて口をつぐんだ。
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
口紅べに白粉おしろいの薄化粧をほどこしているさま、敢て魔神ののろいを身にうけんとして来た化粧としか思われません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若い女は、髪の毛こそ、根が切れて乱れていたが、まだ生きてるように、化粧の白粉おしろい口紅べにが浮き立っていた。紫いろになった唇をチラと噛んで笑っているのである。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「貸してくんな。へへへへ口紅べにがついているぜ」
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呪いの闇を払ったあけぼのを象徴する一点の口紅べに
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)