厠上しじょう)” の例文
厠上しじょう」のほうは人によると現在でも適用するかもしれない。自分の知っている人の内でも、たぶんそうらしいと思われるほどの長時間をこの境地に安住している人はある。
路傍の草 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼は度たび本を前に夜を徹したことを覚えている。いや、几上きじょう、車上、厠上しじょう、——時には路上にも熱心に本を読んだことを覚えている。木剣は勿論もちろん「水滸伝」以来二度と彼の手に取られなかった。
鞍上あんじょう厠上しじょうの場合にはこれが明白であるが枕上ちんじょうではこれが明白でないように見える。
路傍の草 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
三上さんじょう」という言葉がある。枕上ちんじょう鞍上あんじょう厠上しじょう合わせて三上の意だという。「いい考えを発酵させるに適した三つの環境」を対立させたものとも解釈される。なかなかうまい事を言ったものだと思う。
路傍の草 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)