匕首ひしゆ)” の例文
渡すとき、自分は刃の方を持ち、武蔵には石突の方を向けて出した。匕首ひしゆふところにしてゐた武蔵も、思はずハツと平伏して、薙刀を押し頂いたのである。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
現在の恋愛に胸をえぐるやうな鋭さがあり、身を殺すやうな劇烈な作用があつて見れば、何も未知の女の己の上に加へようとする匕首ひしゆや毒薬を顧みるには及ばない。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
門閥もんばつの為め、自我の為めに、毒薬と匕首ひしゆとを用ゐることをはばからない Cesareチエザレ Borgiaボルジア を、君主の道徳の典型としたのなんぞを、真面目に受け取るわけには行かない。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
拳銃や、トルコ刀や、ヤタガンと云ふ曲つたたうや、匕首ひしゆなんぞの種々な形をしたのが、その男の前に積み上げてある。僕が近寄ると、その男は身を屈めた。僕はその様子を見てゐた。
不可説 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)