剣尖けんさき)” の例文
一角が片手に持った大刀は、ヌーと寄って、相手の精気をすくませ、みるまに、その剣尖けんさきに立った者を、死相に変らせてしまうかと思われる。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銃は側の砂の上に倒れ、その剣尖けんさきがきらきらと月に光っていた。私は傍に行って彼を見下したまま「Nか?」と訊ねた。Nというのは昼間彼といさかいをした五年生の名前だった。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
しかも、満面まんめんに不敵な笑みをたたえて、挑むが如き剣尖けんさきを躍動させているから、今はもう不思議だなぞと首をかしげてはいられない。カッ! と怒りを発した源助町の天童利根太郎が
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
青眼の構えよりも、すこしく左手を内側に締めこんで、剣尖けんさきをややさげ、踏みだした左の膝をこころもち前のめりにまげて、立ったまま、一眼をおもしろそうに笑わせて立っている。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)