内記ないき)” の例文
別館の一間に寝ているのは、耳を病んでいる松乃であった。枕もとには水を張った小桶が置いてあり、その横には良人おっと内記ないきが、心配そうにして坐っていた。
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
正成の諫奏は、内容が内容だけに、そのおりの侍座じざ以外には、かたく口を封じられたが、それですらもうこのていどには六位ノ蔵人くろうど外記げき内記ないきあたりの者にはささやかれていた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内記ないき上人しやうにんではございませんか? どうして又このやうな所に——」
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「仰せつけのまま、謹んで、浄書つかまつりました。……なれど、異例なる綸旨ゆえ、辞句にも甚だ苦しみ、内記ないきの人々とも、篤と文案を練りましたものの、なお心もとなく存ぜられます」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)