八寒嘯はっかんしょう)” の例文
音色に鬼韻きいんのあるのは好ましいとさえ思うが、八寒嘯はっかんしょうという銘の意味を酌むと、なにもかも白い氷にてている天地が想像されてならない。
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その日も、笛を習うつもりで、八寒嘯はっかんしょうをたずさえて行った三五兵衛は、少しまごついて、早々に平六に見送られて帰った。
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、笛ぶくろから、かれの愛笛——八寒嘯はっかんしょうめいのあるそれを抜いて、たまらない重苦しさから、逃げようとした。
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
探りとった笛袋から抜いて、彼の指にかけられた八寒嘯はっかんしょうは、やがて、氷柱つららの林からひびく木魂こだまのように、鳴りだした。
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
安成三五兵衛の愛する八寒嘯はっかんしょうの音にそっくりであった。それは、ひとつに静止し得ない人生の行旅と、人間の感情のように、うらむが如く、くがごとく、また、笑うが如く——。
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
笛ぶくろから、八寒嘯はっかんしょうをぬいているまに、賛之丞の影は、もう、そこになかった。
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)