いつは)” の例文
感覚をいつはることにれた此女の情熱のうちに、どれだけの真実が含まれて居るのであらうか。俺は知らない。ただ此女ならばまづ心がゆるせる。
瘢痕 (新字旧仮名) / 平出修(著)
わが見たるところによれば彼は血と怒りの人なりき、この時罪人これを聞きていつはらず、心をも顏をも我にむけ、悲しき恥に身を彩色いろどりぬ —一三二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
天台寺の住寺とはいつはり。まことは切支丹キリシタン婆天蓮バテレンともがらと思ひしが、それもいつはり。そのまことは、かゝる山中に潜み隠れ居る山賊夜盗の首領なりしかと今更に肝を消しつ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いつはりの花と糧秣はぶち撒かれ、床板に虚しく歯車の痕が錆びてゐる。いま襤褸をづらし、十指を組み、ヂザニイの干乾らびた穂束に琥珀を添へて、純潔の死と親愛とを祈る彼等だ。
逸見猶吉詩集 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)