仁木弾正にっきだんじょう)” の例文
芝居でする仁木弾正にっきだんじょうが、刃傷場にんじょうばでくしゃみをするようなもんだ、栄二はそう思って笑おうとしたが、続いて綿文の座敷が眼にうかんできた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこで、青葉城の御宝蔵へ、仁木弾正にっきだんじょうを決め込んで、その赤穂義士とやらの書き物を、ともかく九分九厘まで持ち出したのだ。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一番目は「先代萩」で、この興行には市川九蔵が久々で出勤して、仁木弾正にっきだんじょうと武田信玄をつとめることになった。団十郎は向井将監のほかに政岡まさおかと男之助と細川勝元をつとめた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
せり上る時はセビロの仁木弾正にっきだんじょうだね。穴の中は電気灯であかるい。汽車は五分ごとに出る。今日はすいている、善按排いいあんばいだ。隣りのものも前のものも次の車のものも皆新聞か雑誌を出して読んでいる。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仁木弾正にっきだんじょうは鼠を使って忍びの術で入り込んだが、七兵衛は七兵衛冥利だ、こいつは一番、このお城の中の隅から隅——六十八万石の殿様のお居間から、諸士方の宿直部屋とのいべや飯炊場ままたきばも、床下も
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)