人聞ひとぎき)” の例文
真似をすると云うと人聞ひとぎきが悪いが骨を折らないで、うまい汁を吸うほど結構な事はない。この点において私は模傚に至極しごく賛成である。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こう言うと、何か、さも孝行の吹聴ふいちょうをするようで人聞ひとぎきが悪いですが、姉さん、貴女あなたばかりだから話をする。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
別荘というと大変人聞ひとぎきが好いようですが、その実ははなはだ見苦しい手狭てぜまなもので、構えからいうと、ちょうど東京の場末にある四五十円の安官吏の住居すまいです。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この仙太郎さんの一人娘が講釈師の貞水ていすいと好い仲になって、死ぬの生きるのという騒ぎのあった事も人聞ひとぎきに聞いて覚えてはいるが、まとまった記憶は今頭のどこにも残っていない。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)