乱波者らっぱもの)” の例文
酒匂の木戸は、往来人のあらために厳密をきわめていたが、誰あって、彼を敵国の乱波者らっぱもの(間者)と見やぶる者はなかった。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『上杉家の乱波者らっぱもので、安中三郎様の手勢についている石田大七殿でございました。——そして、笛もやはり、姫さまのお察しどおり、あの杜鵑管とけんかんでございました』
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつどんな梟雄きょうゆうが立って、どんな野心を奮い起さない限りもないのだ。乱波者らっぱもの(おんみつ)はどこの城下へも入りこんで、枕を高くして寝ている国をさがしているのだ。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
怖ろしい秘密性を持つ乱波者らっぱもののがんまくすら、彼には遂に、何も隠さなかった。織田一藩で知る者のない、身の上までを、簡単ではあるが、とうとう打ち明けてしまった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
恵那えなの山づたいに甲州へ落ちのび、例の小六が苦心して製作させた鉄砲を献物けんもつとして、武田家へ取り入り、甲州の乱波者らっぱものの組(しのび・攪乱隊こうらんたいの称)へはいったということであった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『まだある。敵の安中三郎進から八雲のところへ密使をよこしたのを、逸早いちはやく知って、その乱波者らっぱものを召捕らえ、八雲の邸へ奉行所の討手を向けたのも、後で聞けばみな熊楠のさしがねだという』
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「したが、乱波者らっぱものなどには、心のいやしい者もある。まちがいはないか」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)