中黒なかぐろ)” の例文
一人は白羽の矢をつがえ、一人は中黒なかぐろの矢をつがえ、狙いが決った時、同時に矢ははしばみの枝をくぐって放たれた。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ところが、眼の前へかかって来た人馬の笠印かさじるしやら旅道具を見ると、俗に中黒なかぐろという丸に太い一本筋の紋——。足利家のと、よく似てはいるが、違っていた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中黒なかぐろの軍旗の下は、こうして越後同族を合流し、その日から一やく、四千騎ぢかい奔流となっていた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、俄に、とりでの高い所に、中黒なかぐろの旗(新田方の印)を掲げ、妙恵の床几しょうぎの前へ来て
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まぎれなく、それは源家の祖八幡殿が、願文とともに納めた旗らしく思われたが、あいにく紋は二引両にびきりょう(足利の定紋)であって、新田家の中黒なかぐろもんでなかった。で、彼は不きげんな色になって