これは中臣宅守なかとみのやかもり娘子おとめに贈った歌だが、この方は気がかない程地味で、骨折って歌っているが、娘子の歌ほど声調にゆらぎが無い。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それがいくつかの似たやうな物語——例へば萬葉集の石上乙麻呂いそのかみのおとまろの流離の歌や、中臣宅守なかとみのやかもり狹野茅上娘子さぬのちがみのをとめとの悲戀の相聞のやうなもの——に次から次へと姿を變へながら
若菜の巻など (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)