上層うえ)” の例文
するすると柱づたいに上層うえの廊下の方から降りて来るものも有る。いくらか引込んでいるだけに静かな窓のところへ菅は腰掛けて
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
例の上層うえが干菓子で、下が銀貨しろいのだから、たまらないさ。紅葉もみじが散る雪が降る、座敷じゅう——の雨だろう。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
第一彼奴らには学問がある、一度は上層うえにいた経験もある。その時代のことが忘れられないで不平と不満とが、心を一杯に充たしている。したがって乱を思うのじゃな
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
肉食者にくじきしゃいやしむべしと申すが、武士道は、上層うえになくて、下層したにある。世の中を浄化する力も、国を支える力も、支権者にはのうて、無力な下層の方にあるというは、妙な話じゃぞ
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)