さけ)” の例文
けもの雪をさけて他国へ去るもありさらざるもあり、うごかずして雪中に穴居けつきよするはくまのみ也。熊胆くまのいは越後を上ひんとす、雪中の熊胆はことさらにあたひたつとし。
いわゆる諾威ノア方舟はこぶねを造り、その族人および禽獣の属おのおの一ごうを乗せて洪水をさけしというがごときこれなり。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
しゃさけ出来栄できばえに、たちまち一部の册子そうしとなりぬ。そもこの話説はなしの初集二集は土竈どがまのパットせし事もなく。起炭おこりずみにぎやかなる場とてもあらねど後編は。駱駝炭らくだずみ立消たちぎえなく。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さける程の大酒なりされども喧嘩口論は勿論何程に酩酊めいていなすとも夢中に成てたふれ或ひは家業を怠惰おこたりしと云事なく只酒を飮をたのしみとしてかせぎ兄を助ける故人々心隔こゝろおきなく半四郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一方、男の方では、彼女がさけやうとしてゐる事を知るとます/\惨酷に彼女を扱ひ出しました。出来る丈け無理な要求を持ち出しては彼女を困らして喜んでゐると云ふやうな有様でした。
内気な娘とお転婆娘 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
先刻さつき一寸見えたがナ、僕は何だか気の毒の様に感じたから、挨拶もせずに過ぎたのサ、彼女むかうでも成るべく人の居ない方へと、さけてる様子であつたからナ、山木見たいなおやぢに梅子さんのあると云ふは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
人はほとりにありてかれまさに死せんとする時かならずをひるをさける。狐尾をうごかさゞるを見て溺死おぼれしゝたるをり、尾をり大根をぬくがごとくして狐をる。
さけんには皆殺しにするよりほかなし夫には斯々とひそかに酒の中へ曼多羅華まんだらげといふ草をいれ惣手下そうてしたの者へ酒一たる與へければいかでか斯るたくみのありとは思はんやゆめにも知ず大によろこやがて酒宴を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
山家にてはなだれほふらをさけんため其わざはひなき地理をはかりて家を作る。ほふらに村などつぶれたる奇談きだんとしごろきゝたるがあまたあれど、うるさければしるさず。
○神去り玉ひしより廿八年の後延長八年六月二十六日、大雷清涼殿におちて藤原清貫きよつら(大納言)平稀世たひらのまれよ(右中弁)其外侍候じかうの人々雷火に即死そくしす、 延喜帝常寧殿じやうねいでんに渡御ありて雷火をさけたまふ。
そのありがたさを吾がのちへもしめさんとてふでついでにしるせり。近年は山家の人、家を作るに此雪頽なだれさけて地をはかるゆゑそのなんまれなれども、山道やまみち往来ゆきゝする時なだれにうたれ死するものまゝある事なり。