軽薄けいはく)” の例文
旧字:輕薄
夜長の折柄おりからたつの物語を御馳走に饒舌しゃべりりましょう、残念なは去年ならばもう少し面白くあわれに申しあげ軽薄けいはくな京の人イヤこれは失礼
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
諸君はその軽薄けいはくに不快を禁じ得ないだろう。私から云うならば前論士の如きにいずれの教理が深遠なるや見当も何もつくものではないのである。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
糟谷かすやはがらにないおじょうずをいったり、自分ながらひやあせのでるような、軽薄けいはくなものいいをしたりして、なにぶんたのむを数十ぺんくりかえしてした。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
左様な軽薄けいはくな考えと取らるる事が心外でござる。今の世相を御覧あらぬか。武士道がどこに、君臣の義がどこに。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本県の中学は昔時せきじより善良温順の気風をもって全国の羨望せんぼうするところなりしが、軽薄けいはくなる二豎子じゅしのために吾校わがこうの特権を毀損きそんせられて、この不面目を全市に受けたる以上は
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
青々せいせいたる春の柳、家園みそのゆることなかれ。まじはりは軽薄けいはくの人と結ぶことなかれ。楊柳やうりうしげりやすくとも、秋の初風はつかぜの吹くにへめや。軽薄の人は交りやすくして亦すみやかなり。
そこへ行くと、多少軽薄けいはくではあっても常に才気と活力とに充ちている子貢の方が、子路の性質には合うのであろう。この若者の頭の鋭さに驚かされるのは子路ばかりではない。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
耶蘇やそほど霊力れいりょくがあるなら、巳代吉の唖は屹度きっとなおる。年来ねんらい眼の前に日々此巳代吉にあらわるゝなぞを見ながら、かなしいかな不信ふしん軽薄けいはくの余には、其謎をき其舌のしばりを解く能力ちからが無い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかし、お見うけしたところ、二度や三度顔を見たばかりの女に心を動かすような、そんな軽薄けいはくな方だとも思えませんし、そう疑ってみるだけでも失礼なような気がいたします。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
かの子 理智りちから明快に生きる青年と時代のカスをなめてただ軽薄けいはくにその場その場の生活をするのと両方でしょうね。もちろん女性にもそれに適応した型が幾つもの差別で存在してます。
新時代女性問答 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
中津へ移住する江戸の定府藩士は妻子と共に大都会の軽便流を田舎藩地の中心に排列はいれつするのいきおいなれば、すでに惰弱だじゃくなる田舎いなかの士族は、あたかもこれに眩惑げんわくして、ますます華美かび軽薄けいはくの風に移り
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
けだし芭蕉の盆石ぼんせきが孔夫子の泰山たいさんに似たるをいふなり。芭蕉かつて駔儈そくわいふう軽薄けいはくしふ少しもなかりしは吟咏ぎんえい文章ぶんしやうにてもしらる。此翁は其角がいひしごとく人の推慕すゐぼする事今に於も不可思議ふかしぎ奇人きじんなり。
でっくりふとった膏親爺あぶらおやじと、軽薄けいはくらしい若いものと、誰が見ても、人買が買出した様子なのが、この炎天だから、白鵞はくがかもも、豚も羊も、一度水を打って、いきをよくし、ここの清水で、息を継がせて
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すぐお追従ついしょうをいう軽薄けいはくなかれのしたは、それでもまだいいたらずに、つけ加えて、また話すことには
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仏教徒諸君、釈迦を見ならえ、釈迦の相似形となれ、釈迦の諸徳をみなその二万分一、五万分一、あるいは二十万分一の縮尺スケールに於てこれを習修せよ。ああこの語気の軽薄けいはくなることよ。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
江戸っ子は軽薄けいはくだと云うがなるほどこんなものが田舎巡いなかまわりをして、わたしは江戸っ子でげすと繰り返していたら、軽薄は江戸っ子で、江戸っ子は軽薄の事だと田舎者が思うに極まってる。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
林長館といえるに宿りしが客あしらいも軽薄けいはくならで、いとたのもしく思いたり。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
けだし芭蕉の盆石ぼんせきが孔夫子の泰山たいさんに似たるをいふなり。芭蕉かつて駔儈そくわいふう軽薄けいはくしふ少しもなかりしは吟咏ぎんえい文章ぶんしやうにてもしらる。此翁は其角がいひしごとく人の推慕すゐぼする事今に於も不可思議ふかしぎ奇人きじんなり。
軽薄けいはくなお追従ついしょうをのべたてている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)