)” の例文
さては相見ての後のたゞちの短きに、戀ひ悲みし永の月日を恨みて三ぱつあだなるなさけを觀ぜし人、おもへばいづれか戀のやつこに非ざるべき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
たらいほどある鉄の受糧器を持って、腕の太さの錫杖しゃくじょうを衝いている。あとからは頭を剃りこくって三を着た厨子王ずしおうがついて行く。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ついでに、脇差のこうがいをぬらし、びんの乱れをなでつけて、紋を直した落着きは、こんな場合にも、さすが尾張の御曹司おんぞうしです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二、四、じゅう六の法式のうちの、第三、常乞食じょうこつじきの法が自然に十二行の中枢たるの観を為すに至っているので、頭陀行をすると云えば乞食をするということのようになっている。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼を思ひ是を思ふに、身一つにりかゝるき事の露しげき今日けふ此ごろ、瀧口三の袖を絞りかね、法體ほつたい今更いまさら遣瀬やるせなきぞいぢらしき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
かれが着馴れた普化宗ふけしゅうの三を脱いで、ちょうど、花から青葉へ移るころもがえのしおに、黒奉書の軽い着流しとなったのも、ひとつは、阿波の詮索せんさくをのがれる当座の変装である。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)