葉蔭はかげ)” の例文
やさしいはなは、あめにぬれたままうなだれて、はやくからねむってしまい、そしてその葉蔭はかげのあたりから、むしこえながれていました。
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その声が、耳近みみぢかに聞こえたが、つい目前めさきの枝や、茄子畑なすばたけの垣根にした藤豆ふじまめ葉蔭はかげではなく、歩行ある足許あしもとの低いところ
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
牧場の真ん中にはたった一本のかしわがあるきりだ。で、牛どもはその葉蔭はかげをすっかり占領している。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
彼はその楽しい葉蔭はかげを近くにある天文台の時計の前にも見つけることが出来、十八世紀あたりの王妃の石像の並んだルュキサンブウルの公園の内に見つけることも出来た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
暁方空の白むころおいと、夕方夕焼けが真赤に燃えるころおいには、それらのおびただしい雀の群れが鉄格子の窓とその窓にまでとどくきり葉蔭はかげに群れて一せいに鳴きはやすのである。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
常磐木ときわぎ葉蔭はかげから、あかそらいろられました。すると、みつばちは、かれわかれをげて、いずこへとなくんでいってしまいました。
みつばちのきた日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのころ、しろくものあわただしくはしる、そらしたで、ねこは、はなにとまろうとする、しろ胡蝶こちょう葉蔭はかげにかくれて、ねらっていました。
どこかに生きながら (新字新仮名) / 小川未明(著)
二郎じろうは、さっそくはたけへといさんでゆきました。そして、はさみをにぎって、葉蔭はかげをのぞきますと、そこにおおきなきゅうりがぶらさがっています。
遠くで鳴る雷 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いけなかには、黄色きいろなすいれんがいていました。金魚きんぎょあか姿すがたが、みずうえいたりまるい葉蔭はかげかくれたりしていました。
少年の日二景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昼間ひるまは、そこに、ちょうや、みつばちがあつまっていて、にぎやかでありましたけれど、いまは、葉蔭はかげたのしいゆめながらやすんでいるとみえて、まったくしずかでした。
月夜と眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おもしろいな。だれかんでおいでよ。」と、正二しょうじは、とうもろこしの葉蔭はかげかくれました。
二百十日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
花園はなぞのには、ちょうや、みつばちが、はなうえまったり、葉蔭はかげかくれたりして、平和へいわねむっていました。また、かしのひとりぼっちで、いつものごとくさびしそうにだまってねむっていました。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「もう、あんなにおおきくなった。」と、かれは、毎日まいにちのように、うちまえはたけては、きゅうりの葉蔭はかげをのぞいて、一にちましにおおきくなってゆく、あおては、よろこんでいたのであります。
遠くで鳴る雷 (新字新仮名) / 小川未明(著)