置物おきもの)” の例文
それから、しろきつね姿すがたをあらはした置物おきものいてありました。その白狐しろぎつねはあたりまへのきつねでなくて、寶珠はうじゆたまくちにくはへてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
たゞ自分じぶんいますわつてゐるたゝみいろや、天井てんじやう柾目まさめや、とこ置物おきものや、ふすま模樣もやうなどのなかに、この屏風びやうぶててて、それに、召使めしつかひ二人ふたりがゝりで
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ところが、母様おつかさんわたしとのほからないことをモ一人ひとりほかつてるものがあるさうで、始終しゞう母様おつかさんがいつておかせの、それ彼処あすこ置物おきもののやうにかしこまつて
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ホウ、君はそこのとこにポツンとっている変な置物おきものに目をつけておいでのようですな。そうです、君の仰有るとおり、それは加減蓄電器バリコンこわれたものなのですよ。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
ちらりと磯吉を見て、マスノもやはりあとをいわずにとこを指した。そこにはハガキ型の小さな額縁がくぶちにいれた一本松の下の写真が、木彫きぼりの牛の置物おきものにもたせかけてあった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
それは、ぬだろう。しかし、もう置物おきものにされてふるいのだから、あてにならんが、それより、もっとおそろしい毒薬どくやくたことがあるよ。ただただけでは、つまらんしろこなさ。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
またとこには一ぷく女神様めがみさま掛軸かけじがかかってり、そのまえには陶器製とうきせい竜神りゅうじん置物おきものえてありました。その竜神りゅうじん素晴すばらしいいきおいで、かっとおおきなくちけてたのがいままえのこってります。
雲は光って立派りっぱ玉髄ぎょくずい置物おきものです。四方の空をめぐります。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
とほくのはう堤防どてした石垣いしがきなかほどに、置物おきもののやうになつて、かしこまつて、さるる。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)