)” の例文
かれかぎを以ちて、その沈みし處を探りしかば、その衣の中なるよろひかりて、かわらと鳴りき。かれ其所そこに名づけて訶和羅の前といふなり。
なまぐさき油紙をひねりては人の首を獲んを待つなる狂女! よし今は何等の害を加へずとも、つひにはこの家にたたりすべき望をくるにあらずや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
既に其の心を寄せ念をくるところを定めた以上は、其の深きを勉めなければ、井を鑿して水を得るに至らず、いたづらに空坎くうかんを爲す譯である。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
わたくしはしばらく此詩中に云ふ所を此年のもとける。蘭軒は二月の頃に「野遊」に出た。「数試春衣二月天」の句がある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
せめて一度は、年よりらしい、有頂天の喜びを催さしてあげたいと思ふけれど、私に、其望みをけてゐてくれる学位論文なども、書く気にもなれない。
古代研究 追ひ書き (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
すべてに対して「なぜに」と反省し、理智の批判を経て科学的の合理を見出みいだし、自己の思索にけた後でなければ承認しないという事になって行くであろう。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
たちまち進み来たれる紳士は帽を脱して、ボタンの二所れたる茶羅紗ちゃらしゃのチョッキに、水晶の小印こいん垂下ぶらさげたるニッケルめっきくさりけて、柱にもたれたる役員の前にかしらを下げぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
如何どんな事でも試験に関係の無い事なら、如何どうなとなれと余処に見て、生命の殆ど全部を挙げて試験の上にけていたから、若し其頃の私の生涯から試験というものを取去ったら
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
数で云うたらたった二十万坪の土地、喜憂きゆうくる人と戸数と、都の場末の一町内にも足らぬが、大なる人情の眼は唯統計とうけいを見るであろうか。東京は帝都ていと寸土すんど寸金すんきん、生がさかれば死は退かねばならぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
竜女の髪を採りて身体にけ、一切天竜羅刹等を服従せしむる等の法を載す、上引の『今昔物語』の文に竜の油を以て如意を延ばすとあるは、この話の主人公たる若者が観音に仕えたとあるに因み
法律は鉄腕の如く雅之をらつし去りて、あまつさへつゑに離れ、涙によろぼふ老母をば道のかたはら踢返けかへして顧ざりけり。ああ、母は幾許いかばかりこの子に思をけたりけるよ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
わたくしは松田氏の云ふ所の柏軒立志の事を以て、此年文政十一年正月の下にくべきものとした。わたくしは先づ柏軒が兄榛軒を諫めたことを語つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
洪武二十五年九月、懿文太子の後をけてその御子おんこ允炆皇太孫の位にかせたもう。継紹けいしょうの運まさにかくの如くなるべきが上に、しもは四海の心をくるところなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
天の兒屋の命太祝詞ふとのりと言祷ことほぎ白して、天の手力男たぢからをの神一六、戸のわきに隱り立ちて、天の宇受賣うずめの命、天の香山の天の日影ひかげ手次たすきけて、天の眞拆まさきかづらとして一七
雪枝ゆきえ作品さくひんならべたところは、あだか釣糸つりいとけた浮木うきさかな風情ふぜいであつた。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そしてわたくしは聞く所の事の是正月のもとくべきものなるをおもふ。此に先づ聞く所を叙することとする。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
上枝ほつえに八尺の勾璁の五百津の御統の玉を取りけ、中つ枝に八尺やたの鏡を取りけ、下枝しづえ白和幣しろにぎて青和幣あをにぎてを取りでて一五、この種種くさぐさの物は、布刀玉の命太御幣ふとみてぐらと取り持ちて
唯敢ただあへてこれをざるは、ひそかに望はけながらも、行くべきかたうらみを解かざるをおそるるゆゑのみ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
翰林学士かんりんがくし劉三吾りゅうさんご御歎おんなげきはさることながら、既に皇孫のましませば何事か候うべき、儲君ちょくんと仰せ出されんには、四海心をけ奉らんに、のみは御過憂あるべからず、ともうしたりければ
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
多分金銀にのぞみけたものであろう。家督相続の事をよろしく頼む。かたきを討ってくれるように、伜に言ってもらいたいと云うのである。その間三右衛門は「残念だ、残念だ」と度々たびたび繰り返して云った。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)