空言そらごと)” の例文
「私の言は、決して、空言そらごとではありません。——かくの如く、いつにてもあれ、将門討伐の官命はあることになっているのです」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あかりまどよりのぞきやすらんとたはむれにおどせば、よめもむすめも空言そらごとのたまふなと口にはいへど、母の左右によりつきておそるゝさま也けり。
召抱へ候と云ば越前守殿否々いや/\かれ輕蔑ないがしろになすには有間じ是は正しき舊來きうらい家付の家來に付其もと我意がい異見いけんに及び兎角とかく邪魔じやまに成故ならん然樣さやう空言そらごと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すべてそれらの名目は、美辞麗句であり空太鼓からだいこであり空言そらごとである。そのふくらみは針でひと突きすれば縮んでしまう。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
蘭子の父はその美しい妻をおとりにして、ちょくちょく美人局つつもたせを働いていたというから、今度の犯人も恐らく蘭子の母親の甘い空言そらごとに酔わされた一人であろう。
江川蘭子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
善導の御釈偽りならずば法然聖人ほうねんしょうにん御勧化ごかんげよも空言そらごとではありますまい。(間)いやたとい法然聖人にだまされて地獄にちようとも私は恨みる気はありません。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
また天下の空言そらごとだろうと思えるので、気強く「只今は心もちが悪うございますので、いずれ後ほど——」
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
われは御覧の通り、面相の醜きより菩提心を起して仏道に入りし者なりとて、空言そらごと真事まごと取り交ぜて、尋常の六部らしく諸国の有様を物語るに、聞き終りし和尚は関羽鬚を長々と撫で卸しつ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私達は先生の氣焔が餘に空言そらごとであつたのに、失望せずにはゐられなかつた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
もしそうでないとすれば他力の信仰は畢竟空言そらごとでなければならぬ。
語られざる哲学 (新字新仮名) / 三木清(著)
マーキュ 空想家ゆめをみるをとこ囈言ねごと空言そらごとふのがくせぢゃといふことを。
そのなかにまれにありつる空言そらごとも憎ふはあらじ思ひ出つれば
かろきねたみ (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
いよ/\一室をてらさば吾が身上のこらずのちからつくしてもとむべし、なかだちして玉はるべしといひしが、そのゝちなにの便たよりもなくてやみぬ、空言そらごとにてありしと思はる云云。
涙がこぼれてくると、胸につかえていた空言そらごとまでが、苦もなく、真実そうにスラスラ口へ出てきた。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ずいぶん有り触れた空言そらごとさえ書いてあるようだから、自分の並々ならぬ身の上を日記につけて見たら、そんなものよりも反って珍らしがってくれる人もあるかも知れない。
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
引出ひきいだすなり加之そのうへ御邊の居間ゐまの金子紛失ふんじつは伴佐十郎建部郷右衞門の兩人が盜取ぬすみとりしと云事確固たしかなる證據しようこありや是とても其身の惡事をかくさんが爲に跡方もなき空言そらごとを申たて渠等かれら兩人に惡名あくめい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ロミオ 囈言ねごと空言そらごとうちにもうごかぬ眞理まことこもってゐる。
いよ/\一室をてらさば吾が身上のこらずのちからつくしてもとむべし、なかだちして玉はるべしといひしが、そのゝちなにの便たよりもなくてやみぬ、空言そらごとにてありしと思はる云云。
理左衞門は得たりと九助に向ひ其方は言語道斷ごんごだうだんの惡人なり先日獄屋に於て白状致せしを今又然樣さやう空言そらごとを申上ばおのれまたほねくだき肉をひしほにしても云さすぞ少しくあまことばかくれば直樣事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
両人たいまつをふりてらしてこゝかしこをみるに光るものさらになく、またあやしむべきをみず、さては人のいふは空言そらごとならん、いざとてかへらんとしけるに、水上にはか光明くわうみやうはな
両人たいまつをふりてらしてこゝかしこをみるに光るものさらになく、またあやしむべきをみず、さては人のいふは空言そらごとならん、いざとてかへらんとしけるに、水上にはか光明くわうみやうはな