いさご)” の例文
ぐるりと三人、がなえに夫人を巻いた、金の目と、銀の目と、紅糸べにいとの目の六つを、あしき星のごとくキラキラといさごの上に輝かしたが
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
東の川には瑠璃るりいさご が流れて居る。南の川に銀砂が流れて居る。西の川には黄金の砂が流れて居る。北の川には金剛石の砂が流れて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
いつの年に難破して流れよつたかわからない一本マストの船——それから浜づたひに始めは細かい滑かないさごであつたのが、次第に小石雑り、岩石雑りになつて
磯清水 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
嵐を友としていさごに臥して龍顏のおんいきざしを守り、聊もそむき奉らじとふるまはれしに、寂寞じやくまくの風に心を破られて、草を枕としては松のひとりにならんとするを悲み
山家ものがたり (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
……浜のいさごと話題はつきないが、なにより好きなのは他人ひとのあらさがしで、よく飽きないものだと思われるほど、男も女もひがなまいにち人の噂ばかりして暮らしている。
キャラコさん:01 社交室 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
明るいのは山のばかりではなかつた。地上はいさごの数もよまれるばかりである。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
さらさらといさごを洗う波の音の伴奏に連れて、えたばちのさばきが泉の涓滴けんてきのように、銀の鈴のように、神々こうごうしく私の胸にみ入るのである。三味線を弾いている人は、疑いもなくうら若い女である。
母を恋うる記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いさごついの墓ならず
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
「おいの、さればいの、おたがいいさごの数ほど苦しみのたねは尽きぬ事いの。やれもやれも、」と言いながら、斜めに立ったひさしの下、何をのぞくか爪立つまだつがごとくにして
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
地上は、いさごの数もよまれるほどである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
庭のいさごは金銀の、雪は凍った、草履でよし、……瑠璃るりとぼそ、と戸をあけて、硨磲しゃこのゆきげた瑪瑙めのうの橋と、悠然と出掛けるのに、飛んで来たお使者はほおの木歯の高下駄たかあしだ
いなびかりちっと気がえがね、二見ヶ浦は千畳敷、浜のいさごは金銀……だろう、そうだろそうだろうであろ。成程どんどん湧いていら、伊良子いらこヶ崎までたっぷりだ。ああ、しかし暑いぜ。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
去年ちょうど今時分、秋のはじめが初産ういざんで、お浜といえばいさごさえ、敷妙しきたえ一粒種ひとつぶだね
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いさごのなかなる金色こんじき細蠃きしゃごなり。軒に見馴みなれしと思う蜘蛛の巣のおかしかりしさまさえ懐しけれど、最も慕わしく、懐しき心に堪えざりしは、雪とて継母のむすめなる、かの広岡の姉上なりき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)