清姫きよひめ)” の例文
もう少し涼しくなると、彼女は鱗形うろこがたの銀紙を貼り付けたあかい振袖を着て、芝居で見る清姫きよひめのような姿になって、舞台で蛇を使うことがある。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「すると、しんから、そこに恋しいお方があるとすれば、清姫きよひめのようにじゃになって、あの鳴門なるとを越えなければなりませんね」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そはこの話にとどまらず、安珍あんちん清姫きよひめの話を翻訳したる「紀州きしう日高ひだかの女山伏やまぶしを殺す事」も然り、くずの話を翻訳したる、「畜類人とちぎ男子をのこを生む事」
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それが細長くつづきさえすれば、赤であっても、白であっても、ほかのどんな色でも、色合いにはかまわず、土地の人は一体にそれを「清姫きよひめの帯」と呼びます。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
また清姫きよひめ日高川ひだかがわへ飛びこんで、安珍あんちんを追ったときはこんなものか、十七や十八で豪気なもの。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
着物の市松模様にさえ、嘗て、安珍あんちんを追った清姫きよひめの鬼気がただよっている感さえあった。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
日高川ひだかがは清姫きよひめなどは、きながらじやになつたといふから、これこの部類ぶるゐれてもい。死靈しれうは、死後しごたましひ異形いげう姿すがたあらはすもので、れい非常ひぜうおほい。そのあらはれかたみな目的もくてきつてことなる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
「また、清姫きよひめ安珍あんちんを追っかけて、日高川でじゃになった——てな話だろう」
もしそれ失恋の極蛇になったもっとも顕著なは、紀伊の清姫きよひめの話に留まる。
「そりゃあおおかた清姫きよひめたたりであろう」
初午試合討ち (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
安珍あんちん清姫きよひめのことまで例えに引きました。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
清姫きよひめじゃになったのは何歳いくつでしょう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「蛇は清姫きよひめ日高川ひだかがわよ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
昔から云う安珍あんちん清姫きよひめさ。嫌えば嫌うほど執念深く祟ってるのが当然あたりまえだアね。先方むこうが何とも思わなくっても、此方こっちが惚れていりゃア仕方がないじゃアないか。お前さんは馬鹿だよ、素人だよ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)