せん)” の例文
この壁柱かべはしら星座せいざそびえ、白雲はくうんまたがり、藍水らんすゐひたつて、つゆしづくちりばめ、下草したくさむぐらおのづから、はなきんとりむし浮彫うきぼりしたるせんく。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
地中海面より低きこと二百五十フイート、乾ける湖の如く、一面麦熟れて黄金こがねせんを敷く。パレスタインに来りて今日初めて平野を見、黒土の土らしき土を見る。
このあたり仲春は蕨、ぜんまいの緑せんだが、あの敏感な草の芽、雪の底で春のけはいを如何に……。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
梅のほかには一木いちぼく無く、処々ところどころの乱石の低くよこたはるのみにて、地はたひらかせんきたるやうの芝生しばふの園のうちを、玉の砕けてほとばしり、ねりぎぬの裂けてひるがへる如き早瀬の流ありて横さまに貫けり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
長者僧を供養しおわり、室を開けて見れば右の始末、やむをえず五色のせんもてその屍を飾り、葬送して林中に到る。折悪おりあしく五百群賊盗みし来って、ここに営しいたので、送葬人一同逃げ散った。
華麗のせんは熟睡の彼の頭の下にあり。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
に言伝える。天狗てんぐ狗賓ぐひんむ、巨樹、大木は、その幹のまた、枝の交叉こうさ一所ひとところせんを伸べ、床を磨いたごとく、清く滑かである。
花の蜃気楼しんきろうだ、海市かいしである……雲井桜と、その霞をたたえて、人待石に、せんを敷き、割籠わりごを開いて、町から、特に見物が出るくらい。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かばかりなる巨象の横腹をば、真四角まっしかくに切り開きて、板を渡し、ここのみ赤きせんを敷詰めて、踊子が舞の舞台にいたし候。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
紫に桔梗ききょうの花を織出した、緑はせんを開いたよう。こんもりとしたはてには、山のせた骨が白い。がばと、またさっくりと、見覚えた岩も見ゆる。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いたいけなる幼兒をさなごに、やさしきあねひけるは、せんおくふかく、雪洞ぼんぼりかげかすかなれば、ひなまたゝたまふとよ。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
せんうへを、渓流けいりうそゝぎ、自動車じどうしやさかのぼる。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)