従兄弟いとこ)” の例文
旧字:從兄弟
良人おっと頼春のまた従兄弟いとこにあたる、小次郎様であるようなら、その小次郎様に逢わせていただき、良人の居場所を知らせていただこう。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
主君の信長の従兄弟いとこにあたる名古屋因幡守から、この末臣の家へ、直々じきじきに状を持たせて使いをよこすなどは極めて稀れなことである。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妻はしばしば「あなた方は、従兄弟いとこ同士なら、ときどきは何か言うものよ。唖だって、従兄弟同士なら、手真似まねで語り合っているわよ」
秋草の顆 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
二カ所の広い土地は彼女の従兄弟いとこのワトソンに与えてくれ、金貨の財布は彼女の私室キャビネットにあるということを書き送ってくれと言った。
「三人の従兄弟いとこ」などになると、其上に又親父さんの青年に対する反抗的な感情が一篇の主意もしくは哲理として後の方に出ています。
木下杢太郎『唐草表紙』序 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
従兄弟いとこさえこの通りだから、他人は尚更のことだ。同級生は私を仲間外しにする。今から考えて見ると無理もない。皆いたずらざかりだ。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
従兄弟いとこ味方、な、従兄弟同士ってこのことだ、同じ長屋にいたから味方で、泥溝泥どぶどろ長屋にいたから味方でないってこともござんすまい。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
夫や兄弟や従兄弟いとこのことを心配顔な留守居の婦女おんな、子供、それから老人なぞが休息する兵卒等の間を分けて、右にも左にも歩いていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
破れかぶれよ、按摩さん、従兄弟いとこ再従兄弟はとこか、伯父甥おじおいか、親類なら、さあ、かたきを取れ。私はね、……お仲間の按摩を一人殺しているんだ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
数千年前にそでを分かった従兄弟いとこさがすのに、変ってまた変った現在の言葉を、足場あしば手がかりにしようとするのはまちがいである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
遠藤は母の実家であるが、ふしぎに安倍とは往き来がないので、外祖母のことも、従兄弟いとこに当る千之助のことも、半之助はよく知らなかった。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
福子は庄造と従兄弟いとこ同士で、嫁に来た事情が事情だから、しゅうとめには気がねが要らなかつたし、来た明くる日から我が儘一杯に振舞つてゐたけれど
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
長皇子ながのみこ(天武天皇第四皇子)が志貴皇子しきのみこ(天智天皇第四皇子)と佐紀さき宮に於て宴せられた時の御歌である。御二人は従兄弟いとこの関係になっている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
従兄弟いとこの金之丞が後見人になり、佐吉は相変らず支配人として、店の方を万事取締って行くことに決めてしまいました。
その人は母方の身続きで、下宿の主婦あるじとは従兄弟いとこ同志であった。村では村長をしていて、赤十字の大会などがあると花見がてらにきっと上って来た。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
飛んだ事だといって父がそれでは如何どうしても承知してくれなかったから、じゃ、法学と政治学とは従兄弟いとこ同士だと思って、法律をやりたいと言って見た。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
小山「それにしても血族婚礼は生理上に害がある。モー一層社会が進歩したら従兄弟いとこ同士の婚礼は法律上で禁ずるかも知れんという有様ありさまだ。その事を ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
英語の brave や bravo も「べらぼう」の従兄弟いとこであるが、これはたぶん (L.)barbarus と関係があるという説がある。
言葉の不思議 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「おめえと従兄弟いとこ同士の源右衛門はどうした。駈け落ちをしたと云うのは嘘で、あの抜け道のなかにうまって死んだのだろう。その死骸はどこへ隠した」
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私達が其処そこへ入って行くと、今度○○署の司法主任に栄進した私の従兄弟いとこが快く私達を迎えながら、この事件は自殺でなく絞殺による他殺事件である事
デパートの絞刑吏 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
それに従兄弟いとこたちは大勢だし、汽車や電車のおもちゃはあるし、都会は壮麗だし、何か早く帰りたいらしかった。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
中津人は俗物であるとおもって、骨肉こつにく従兄弟いとこに対してさえ、心の中には何となくこれ目下めした見下みくだして居て、夫等それらの者のすることは一切とがめもせぬ、多勢たぜい無勢ぶぜい
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「えゝ、知ってますとも、従兄弟いとこです。もしかしたらそうじゃないかと思っていたんですが。あゝ、卓一君、可哀想に——こ、こんな有様で死ぬとは——」
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
今日で云へば田舎の豪家の若者が従兄弟いとこ同士二人、共に大学に遊んで、卒業後東京の有力者間に交際を求め、出世の緒を得ようとしてゐるやうなものである。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
従兄弟いとこたちは、お祖母さんと一緒に、板の間でやんやんとはしゃぎながら、小餅を丸めている。お祖父さんと伯母さん夫婦は、奥にでもいるのか、姿が見えない。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
聞けば丈五郎の従兄弟いとことかいうことであったが、まだ若い老先の長い身で、可哀想に、見なされ、あの洞穴の側の魔の淵という所へ、死骸になって浮上りました。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ものが欲しいというのと、見る人がなければひろうということは遠くとも従兄弟いとこ同士ぐらいである。欲しがる人が拾わぬというは、世の中に制裁があるからである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
時にパリーに来ることがあったが、それもごくまれで、マリユスはかつて会ったことがないくらいだった。ふたりの従兄弟いとこは互いに名前だけしか知ってはいなかった。
けれども何よりうれしくって今思いだしても堪りませんのは同じ年ごろの従兄弟いとこと二人で遊ぶことでした。二人はよく山の峡間はざま渓川たにがわ山鰷やまばえりに行ったものでございます。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
父様が血統ちすじ従兄弟いとこ同志ゆえ夫婦にしたら睦ましかろう、此様こんな芽出てい事はねえって、死ぬる臨終いまわに枕元でおえいと婚礼の盃をしたに、貴方あんたは死んだ父様のお遺言を忘れ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのうちに上元じょうげんの節となった。母方の従兄弟いとこという者があって、それが迎いに来たので一緒に遊びに出て、村はずれまでいった時、呉の家のげなんが呉を呼びに来てれていった。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
このことは、父や叔父おじたちや従兄弟いとこたちや数多あまた親戚しんせきなど、彼がなすことをすべて監視しそれをいまいましく思うのを自分の権利だとしてる連中を、たぶんは立腹させるかもしれないと思った。
従兄弟いとこ同士が夫婦に成ることは犬のようである、兄弟が夫婦になったと同じだから許せないというて大いに世人もとがめるのみならず、やはり法律上の罪人としてその処刑を受けなければならん。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
一、親族をむつまじくする事大切なり。これも大てい人の心得たる事なり。従兄弟いとこと申すもの兄弟へさしつづいて親しむべき事なり。しかるに世の中従兄弟となれば甚だうときもの多し。能々よくよく考て見るべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
玉音は地主の娘に生れて従兄弟いとこの弁護士と結婚した。
法華僧の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
『性が合はんでも、僕は君の従兄弟いとこだよ。』
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
己をおじだ、従兄弟いとこだ、兄弟だと云って
「あれは正行まさつら従兄弟いとこ和田正朝わだまさともじゃ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
日常、礼儀作法のやかましいお方が、いかにお従兄弟いとこの仲とはいえ、蚊帳かやの中にはいって、しきりと、密談遊ばしているのだった。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時、客はいまいましそうに、なおも手にした木刀で栄吉の方へ打ちかかろうとするので、半蔵は身をもって従兄弟いとこをかばおうとした。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
福子は庄造と従兄弟いとこ同士で、嫁に来た事情が事情だから、しゅうとめには気がねがらなかつたし、来た明くる日からまま一杯に振舞つてゐたけれど
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
すなわち以前の従兄弟いとこたちが衰弱し散乱して、周囲のより強い部族に吸収せられて、言語や系統の意識を失ってしまっている場合があるからである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
こう思いめぐらしていたとき、後西院ノ上皇という存在に気づいたのであった。上皇と隠居の綱宗とは従兄弟いとこに当る。
矢張り一緒に卒業した従兄弟いとこの寛一君と二人がかりで番頭共にお手本を示す立場だから骨が折れる。神経衰弱にでもかからなければ浩然こうぜんの気は養えない。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
従兄弟いとこなり親友なり未来の……夫ともなる文三の鬱々うつうつとして楽まぬのを余所よそに見て、かぬと云ッても勧めもせず、平気で澄まして不知顔しらぬかおでいる而已のみ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
また二人の様子をじかに観察しても尋常の従兄弟いとこ以上に何物もほのめいていなかったには違ないが、こういう当初からの聯想れんそうに支配されて、彼の頭のどこかに
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三十七、八年の戦役に我が艦隊を悩ました濛気もうきもこの従兄弟いとこのようなものであろう。また船乗の恐れる海坊主というのは霧の濃いかたまりだという説がある。
歳時記新註 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その頃、私を今村家へ書生に入れてくれた、私の従兄弟いとこの岡本という人が、東京市の工事担当員になっていたので、私は岡本さんの事務を手伝うことになった。
私の家はもう妹のお辰に従兄弟いとこの吉五郎を婿に取って継ぎ、私が死んでも何不自由なくやっております。
ソレカラ私も次第に成長して、少年ながらも少しは世の中の事がわかるようになる中に、私の従兄弟いとこなどにも随分一人ひとり二人ふたりは学者がある。く書を読む男がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)