大海嘯おほつなみ)” の例文
造船所ざうせんじよない一部いちぶ貯藏ちよぞうされてあつたのだが、あゝ、昨夜さくや大海嘯おほつなみではその一個いつこ無事ぶじではるまい、イヤ、けつして無事ぶじはづはありません。
ふたゝ幾日いくにち何時なんじごろに、第一震だいいつしん以上いじやうゆりかへしがる、そのとき大海嘯おほつなみがともなふと、何處どこかの豫言者よげんしやはなしたとか。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私達は既に益田の方で萬壽年中の大海嘯おほつなみのことを聞き、あの萬福寺の前身にあたるといふ天台宗の巨刹安福寺すら、堂宇のすべてが流失したことを聞いて來た。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
清の弟に福二といふ人は海岸の田の浜へ婿に行きたるが、先年の大海嘯おほつなみに遭ひて妻と子とを失ひ、生き残りたる二人の子と共に元の屋敷の地に小屋を掛けて一年ばかりありき。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
先日こなひだ横山大観氏が席上せきじやう揮毫きがうで、画絹ゑきぬ書損かきそこなひをどつさりこしらへて、神戸の富豪ものもちの胆を潰させた事を書いたが、人間の胆といふものは、大地震おほぢしん大海嘯おほつなみの前には平気でゐて、かへつて女の一寸したくさみ
大海嘯おほつなみの遠く押しよせてくるひびきがきこえる。
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
大佐たいさこうまさ朝日島あさひじま出發しゆつぱつせんとする瞬時わづかまへ震天動地しんてんどうち大海嘯おほつなみために、秘密造船所ひみつざうせんじよ倉庫さうこくだけて、十二のたる流失りうしつしたことから、つひ今回こんくわい大使命だいしめい立到たちいたつたまで大略あらまし
し、大海嘯おほつなみいまから二三にち以前いぜんことで、海底戰鬪艇かいていせんとうてい船渠ドツクうちなら、第一だいいち警戒けいかいすべき塲所ばしよ其處そこだが、いまは、左迄さまいそいで、檢査けんさする必要ひつえういとかんがへたのである。