厄難やくなん)” の例文
感じ懇切ねんごろ供養くやうをなして後九助の額を熟々つく/″\と見貴殿こなたは大なる厄難やくなんあり是はのがれ難きにより隨分ずゐぶんつゝしみを第一に致されよと申を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大きな厄難やくなんから首尾よくのがれた喜悦よろこびもあったり、産れた男の子が、人並みすぐれて醜いというほどでもなかったので、何がなし一人前の女になったような心持もしていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
きさまらは、泣き言まじりの口癖にさえ、こんな苦役も、女房子のためだとざいているではないか。もし厄難やくなんに出あったらどうするか。褒美はおろか一命もおぼつかないぞ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六条院の人々は皆大厄難やくなんが来たように、悲しんでいる。冷泉れいぜい院も御心痛あそばされた。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
また實際じつさい無※ばかことには相違さうゐないのだが、それが偶然ぐうぜんにも符合ふがふして、いまになつてかんがへると、あだか※去くわこ樣々さま/″\なる厄難やくなん前兆ぜんてうであつたかのごとく、かつ朝日島あさひじま生活中せいくわつちう櫻木大佐さくらぎたいさ此事このことかたつたとき
厄難やくなんに逢つてからこのかた、いつも同じやうな悔恨と悲痛との外に、何物をも心に受け入れることの出來なくなつた太郎兵衞の女房は、手厚くみついでくれ、親切に慰めてくれる母に對しても
最後の一句 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
以て母の長病を介抱かいはう致せし孝行大人おとなも及び難く然るに或時あるとき不※ふと勾引かどはかされしを九助江戸へ出府のみぎり途中とちうにて渠が厄難やくなんを救ひ遣し其後五年過て九助儀は百八十兩餘の大金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「では、どうしたらよいでしょうか。おっしゃるような厄難やくなんを避けるには」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
厄難やくなんに会ってからこのかた、いつも同じような悔恨と悲痛とのほかに、何物をも心に受け入れることのできなくなった太郎兵衛の女房は、手厚くみついでくれ、親切に慰めてくれる母に対しても
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
いまこの厄難やくなんさいして、吾等われらみちたゞ二つある、その一つは、何事なにごと天運てんうんあきらめて、電光艇でんくわうていともこの孤島はなれじま朽果くちはてること——しかしそれは何人なんぴとのぞところではありますまい——一策いつさくほかでも
厄難やくなんさうあるによりよくつゝしめとの事故どういたしたならのがるゝ事やと御聞おきゝ申たれば前世の因縁いんえんより此世に於て災難さいなんあふなれば遁るゝ事はなり難し然ども命にはつゝがないとのおほせなりしが今日まではまづ露命ろめい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)