出店でみせ)” の例文
下谷したや團子坂だんござか出店でみせなり。なつ屋根やねうへはしらて、むしろきてきやくせうず。時々とき/″\夕立ゆふだち蕎麥そばさらはる、とおまけをはねば不思議ふしぎにならず。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こゝに享保年間下總國しもふさのくに古河こがの城下に穀物屋吉右衞門こくものやきちゑもん云者いふものあり所にならびなき豪家がうかにて江戸表えどおもてにも出店でみせ十三げんありて何れも地面ぢめん土藏共どざうども十三ヶ所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私は関口屋の出店でみせでございますと云って、別に家業をやって見たいから、お前はお國さんと二人で一緒に成ってお稼ぎよ
梅屋の子供が長州、桝田屋ますだやの子供が薩摩さつま、それから出店でみせ(桝田屋分家)の子供が土佐とかで、みんな戦ごっこです。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それをおこたると古株ふるかぶはすぐ弱って、ほかの地へ出店でみせを出してしまうからで、いつでもかやを得られるようにするには、やはりユイの協力は欠くべからざるものであった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この外に文庫の出店でみせというような雑誌があった。柳浪が主宰した『小文学』と『江戸紫』と、水蔭が編輯した『小桜縅こざくらおどし』であって、いずれも明治二十五、六年頃の発行であった。
京都きやうと襟新えりしんうち出店でみせまへで、窓硝子まどがらす帽子ばうしつばけるやうちかせて、精巧せいかう刺繍ぬひをしたをんな半襟はんえりを、いつまでながめてゐた。そのうち丁度ちやうど細君さいくん似合にあひさうな上品じやうひんなのがあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一度、二度と間を置くうち、去年七月の末から、梅水が……これも近頃各所で行われる……近くは鎌倉、熱海。また軽井沢などへ夏季の出店でみせをする。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その声は桝田屋ますだやおよび出店でみせをはじめ、蓬莱屋ほうらいや、梅屋、その他の分家に当たる馬籠町内の旦那衆の中から出、二十五軒あるふるい御伝馬役の中からも出た。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
宿場の行き詰まりは、かえってこの回生の活気を生んだ。そこへ行くと、新規まき直しの困難はむしろ従来宿役人として上に立った人たち、その分家、その出店でみせなぞの家柄を誇るものの方に多い。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)