さつ)” の例文
旧字:
下宿げしゅくには書物しょもつはただ一さつ『千八百八十一年度ねんどヴィンナ大学病院だいがくびょういん最近さいきん処方しょほう』とだいするもので、かれ患者かんじゃところときにはかならずそれをたずさえる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
りょうちゃんのいえは、病気びょうきのおとうさんと、はたらきにかけるおかあさんとでありました。りょうちゃんは、一さつほん容易よういってもらえなかったのです。
春風の吹く町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かねて、紋太夫の手許には、かならず一味徒党の連判したさつかんかがあるにちがいないことを、老公は信じて疑わないように一同へ告げおいてあった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてつくえをあけて、中から一さつ楽譜帖がくふちょうをとり出し、ピアノの楽譜台がくふだいにのせて、いてごらんといった。クリストフは大変困ったが、どうかこうか読みいていった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
あがめたてまつ先生せんせいでもゆきあめには勿論もちろんこと、三に一はおことわりがつねのものなり、それをなんぞや駄々だヾさま御機嫌ごきげんとり/″\、此本このほんさつよみおはらば御褒美ごはうびにはなにまいらせん
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さ来年はみんなぼくらのようになってまた新入生をわらう。そうかんがえると何だかへんな気がする。伊藤君いとうくんと行って本屋ほんやへ教科書を九さつだけとっておいてもらうようにたのんでおいた。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
男は身をかがめて、落ちてきたテーブルクロスにつつんだ大きな包みと、三さつのノートを、小わきにかかえこむとみると、うさぎのようなすばやさで木戸きどから大通おおどおりへ走りでた。
今夜わたしのやしきには貧窮ひんきゅうであった時代の友だちが集まって、いっしょに洗礼式せんれいしきいわおうとしている、わたしの書きつづった少年時代の思い出は一さつの本にできあがっていた。
いのち洗濯せんたく」「いのち鍛錬たんれん」「旅行日記」「目ざまし草」「関牧場創業記事」「斗満とまむ漫吟まんぎん」をまとめて一さつとした「命の洗濯」は、明治四十五年の三月中旬東京警醒社書店けいせいしゃしょてんから発行された。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
寅二郎は、着替えの衣類二枚と、小折本孝経こおりぼんこうきょう和蘭文典前後訳鍵オランダぶんてんぜんごやくけんさつ唐詩選掌故とうしせんしょうこさつ抄録数冊しょうろくすうさつとを小さい振分の荷物にした。それが千里の海を渡って、アメリカヘ行く彼の荷物だった。
船医の立場 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
白縮はうち見たる所はおりやすきやうなれば、たゞ人はあやあるものほどにはおもはざれども、手練しゆれんはよく見ゆるもの也。村々の婦女ふぢよたちがちゞみに丹精たんせいつくす事なか/\小さつにはつくしがたし。
それ一さつきりしかない若い時の詩集。
春の詩集 (新字旧仮名) / 河井酔茗(著)
かれ書物しょもつ女主人おんなあるじそりなか積重つみかさねて、軒下のきしたいたのであるが、どこからともなく、子供等こどもらってては、一さつき、二さつ取去とりさり、段々だんだんみんないずれへかえてしまった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
だからこのページ一つが一さつ地歴ちれきの本にあたるんだ。いいかい、そしてこの中に書いてあることは紀元前きげんぜん二千二百年ころにはたいてい本当ほんとうだ。さがすと証拠しょうこもぞくぞく出ている。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「わたしが一さつ本をあげよう。わからないことはそれで知ることができる」こう言ってかれは一つの引き出しから、音楽の理論りろんを書いた本を出した。その本は古ぼけてやぶれていた。
ベンチの上にはれいのノートが三さつかわひもでしばっておいてある。
ただ測量そくりょう園芸えんげいが来ないとか云っていた。あしたは日曜だけれどもくならないうちに買いに行こう。僕は国語と修身しゅうしんは農事試験場へ行った工藤くどうさんからゆずられてあるからのこりは九さつだけだ。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
父がないので母へだけ話したけれども母は心配しんぱいそうにをあげただけで何とも云わなかった。けれどもきっと父はやってくれるだろう。そしたら僕は大きな手帳てちょうへ二さつも書いて来て見せよう。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
またそれらのはなしが金字のあつい何さつもの百科辞典ひゃっかじてんにあるようなしっかりしたつかまえどこのあるものかそれとも風やなみといっしょにつぎから次とうつってえて行くものかそれも私にはわかりません。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
やさしくわらって大きな一さつの本をもっていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)