何様どんな)” の例文
旧字:何樣
それで、其兵士の顔には、他の人への羞しい様な色が溢れて、妹さんを見据えてお居での眼は、何様どんなに迷惑そうに見られたでしょう。
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
政「長さん、珍しく今夜は御機嫌だねえ…お前さんの居る所が知れないと云って、おとっさんやみんな何様どんなに心配をしていたか知れないよ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ほツほ、何を長二、言ふだよ、斯様こんな老人としよりをお前、なぶるものぢや無いよ、其れよりも、まア、何様どんな婦人ひとだか、何故なぜ連れて来ては呉れないのだ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
こう思い決めると、何様どんな困難があっても、吹雪をおかして外を歩いて見たい好奇心が矢の如く心を駆った。早速深く編み上げた藁靴わらぐつ穿いて、雪で吹き閉された戸を開けて外へ出た。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
『決して後の事心配しなさるでねえよ。私何様どんな思いをしても、阿母や此児にひもじい目を見せる事でねえから、安心して行きなさるが可えよ。』
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
新「伊之さん、そんな当こすりを云うもんじゃありませんよ、花魁もこの事に付いては何様どんなに心配しているか知れないんでほんとに可愛そうだわ」
く言うて下ださいました梅子さん」と銀子は嬉しげに「今度はわたしが先年の御恩返しに何様どんな奔走でも致しますよ——梅子さん、ツイ、御名を知らして下ださいな」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
障子の目は暗く紙は赤ちゃけているが、道具というものはこの長火鉢の外に何もなかった。私は終日外に出て家にいることが稀だから、何様どんなものを食べているか食事するのを見たことがない。
老婆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
『……兄さん、何様どんな事があったッて、死んじゃいやですよ。お国には、』と、また泣饒舌をなさる声が聞えたのです。
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
由「これは御新造ごしんぞさん……これはどうも村上の御新造ごしんぞうさん、此処でお茶を売って居らっしゃるとは何様どんな探報者たんぽうしゃでも気が付きません……どうしてまア」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼等は、日本国中、何様どんな小さな村でも見舞わずに通り過ぎることがなかった。今年、或家に黄色な薬袋をおいて去ると、来年、忘れずにその家を見舞って、古いのを新しいのと取り換えて行った。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
私も何様どんなに心苦しいか知れないのですけれど——
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
母「あれやまア、どうも不思議なこんだ、殺された処へ通り掛って脇差い拾ったって、其の斬った奴は何様どんな奴だかね」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何様どんな暮しをしているものだろうと考えながら過ぎたものもあろう。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
あれを還俗げんぞくさせて島田にゆわせたなら何様どんなであろう、なんかと碌でもない考えを起すものなどもござりました。
何様どんな形なのだ。」と聞くと
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
早「何様どんなたって、丹誠して心のたけを書いただが、あんたの袂に書いたものが有ったんべい」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なにもねえ、え、おい、本当に己はおめえのために、何様どんなにか面皮めんぴを欠いたか知れやアしねえ、折角己が親切に世話アしてやった結構なおたなを、お嬢さんゆえにしくじって仕まい
其処そこ江戸子えどこだからのう、兄弟分の固めを仕なければならねえが、おいおめえ田舎は堅えから、己の弟分だと云えば、何様どんな間違まちげえが有ったってもお前他人にけじめを食う気遣きづけえねえ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うも私共の母などもう云っておりますよ、お師匠さんがあんな御病気になるのも、やっぱり新吉さん故だから、新吉さんも仕方がない、何様どんなにも看病しなければならないが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何様どんなにもなんにも娘子あまっこが声をあげて泣いてるだよ、あんたあんまり泣きなすって身体へさわるとなんねえから、泣かねえがうがんすよ、諦めねえば仕様がねえと云うと、わしあれに死なれると
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それについちゃんに相談とうと思っていたが、わしだって今年二十五に成るで、何日いつまで早四郎はやしろう独身ひとりで居ては宜くねえ何様どんな者でも破鍋われなべ綴葢とじぶたというから、早く女房を持てと友達が云ってくれるだ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
貴方にお目に懸りたいと云ってあねさんも何様どんなに待っておいでなすったか知れません、貴方が家出をなさいましても屋敷にられぬ事はございませんが、おっかさんは心配して三年目になくなりまして
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
見渡みわたすに現今いまの世界は交際流行かうさいばやりで、うもこの世辞せじらぬ事だとふけれど、これも言葉の愛でうしても無ければならぬものだ、世辞せじうと性来せいらいの者は、何様どんなに不自由を感じてるかも知れぬから
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)