伊太利イタリー)” の例文
うろ覚えの伊太利イタリーの小唄を、口笛で吹き乍ら、小砂利を踏んで、ザクザクと歩いて居ると不思議なものが私の眼に入って来たのです。
「ええ、よけいもありませんがまあ日本語と英語と独乙ドイツ語のなら大抵たいていありますね。伊太利イタリーのは新らしいんですがまだ来ないんです。」
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それは私に、戦線のにおいをさえ嗅がせた。伊太利イタリー仏蘭西フランスの二つの国家によって、そこの空気は二倍の比重を持っていたからだ。
踊る地平線:10 長靴の春 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
公爵は南伊太利イタリーで有名な社交家だということを知る以上には。彼は若い時にある上流社会の夫ある女と駈落ちしたとの事であった。
伊太利イタリーの王室費は三・二〇〇・〇〇〇弗といふ事になつてゐるが、五六年このかた、経費多端で不足がちだといふ事を聞いてゐる。
伊太利イタリー乾物屋の店先の棒鱈のように寝そべっているのは、当時欧羅巴ヨーロッパ風靡ふうびしている裸体主義ニュディズムの流行に迎合しているのではない。
下等船客かとうせんきやくいち支那人シナじんはまだ伊太利イタリー領海りやうかいはなれぬ、ころよりくるしきやまひおかされてつひにカンデイアじまとセリゴじまとのあひだ死亡しぼうしたため
彼は伊太利イタリーを愛して己れの墳墓にミランの人なにがしと刻せしめた。現實をおもんじた彼の孔子すら道行はれずば舟に乘つて去らうと云つたでは無いか。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
川柳久良岐せんりゅうくらき氏は弔した。「緑の朝」は伊太利イタリーの劇作者ダヌンチオの作で「秋夕夢」と姉妹篇であるのを、小山内薫おさないかおる氏が訳されたものである。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
後に欧洲おうしゅう彷徨ほうこうの旅で知つたのである。それは伊太利イタリーフロレンスの美術館の半円周の褐色のめ壁を背景にして立つてゐた。
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
かりに己が此のフィルムの製造せられる北部伊太利イタリーのミラノの近傍、———あるいはアルプスの山のふもと、或いはコモの湖水のほとりに生れたとする。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
スエズで望んで来た小亜細亜アジア亜弗利加アフリカの荒原、ポオト・セエドを離れてから初めて眺めた地中海の波、伊太利イタリーの南端——こう数えて見ると
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
父を乗せた自動車が、出で去つた後の車寄に附けられた自動車は、荘田がつい此間、伊太利イタリーから求めた華麗なフィヤット型の大自動車であつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
彼等は、仏蘭西フランスに行き、伊太利イタリーに行くを常とした。しかし、そこはまた、彼等にとって、永住の地でなかったのである。
彼等流浪す (新字新仮名) / 小川未明(著)
伊太利イタリー辺の音楽師を見るような気持ちもするが、さてどこの人間かを判定しようとなると、チョット見当が付きにくい。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ミニオンの伊太利イタリー人は、路傍楽ろぼうがく人にならねばならぬのです。隣室からルーレットの玉の転げる音が、悪魔の囁きのように妾の耳に響いて来ました。
バルザックの寝巻姿 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
僕は近頃になってハイネの「伊太利イタリー紀行」の一節を再び思い出している。彼はこの古典の地を訪れ、「悲歌的に夢みながら廃墟の上にすわっている」
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
現に、伊太利イタリーの十八世紀小説の中にですが、凸凹でこぼこ鏡玉レンズを透して癩患者を眺めたとき、それが窈窕ようちょうたる美人に化したという話もあるとおりで……。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ポンペイの街をやうやく見物してしまつて、ひる過ぎて入口のところの食店レストランで赤葡萄ぶだう酒を飲み、南伊太利イタリーむきの料理を食べて疲れた身心を休めてゐる。
ヴエスヴイオ山 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
いろいろな名称に伊太利イタリーそのまゝの地名や、吾々の知る歴史で有名な英雄が現れてゐるので、羅馬ローマにでも程近い駅路の海港場のやうにも思はれたが
山彦の街 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
共にラフアエルの画集をひもどきて我、これらのぐわにある背景バツクの人酔はしむる趣こそ北伊太利イタリーあたりの景色を彼が神筆に写し取りたるものとか聞く。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
甲斐は酒が葡萄牙の葡萄酒で、甘味のあるものだから大和守の口に合うだろうこと、それを飲むための洋杯は、伊太利イタリーのものだということを説明した。
わたくしが申さなくてもつと御合点ごがてんのことですが、さてその時に、その前から他の一行すなわ伊太利イタリーのカレルという人の一群がやはりそこを征服しようとして
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
やがて、味方の墺太利オーストリー軍は北へ/\と追ひまくられて、伊太利イタリー兵の銃剣が辻々をいかめしく固めてしまひました。
けむり(ラヂオ物語) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
伊太利イタリーの有名な犯罪学者ロンブロゾーの著書の中に、定型的な犯罪者の顔としてこのとおりの顔が載っているよ。
墓地の殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
帰りは欧州の医療施設の見学かたがた西独逸ドイツ仏蘭西フランス伊太利イタリー等を回ることにしましたが、私の言いたいのは西独逸のボンに滞在中のことだったのです。
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
外人サーカスでまず眼を驚かしたのが、伊太利イタリーチャリネの曲馬団。明治十九年の夏、神田秋葉の原で最初の興行。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
電車の中でも紙包つつみひらいて見た、オリーブ表紙のサイモンヅの「伊太利イタリー紀行」の三冊は、十幾年来憧れていて、それも此の春漸く手に入ったものであった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
表面は伊太利イタリーの技師のバルトンと申すものが設計したことになっていましたがね。まあ考えて御覧なさい。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
伊太利イタリー唯一の天才と呼ばれた山岳画家ジョヴァンニ・セガンチーニが、夏の初めアルプス山の雪中で、つぼめる薔薇を発見して「薔薇の葉エ・ローズ・リーフ」という名画を描いた
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
実に伊太利イタリーの美学者クローチェが言う如く、認識(観照)に無きものは表現に無く、表現に無きものは認識にないのである。吾人は知らないことを書き得ない。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
マヂニーは何人なんぴとぞや。彼は実に伊太利イタリー新帝国建立の一人なり。彼は実に千八百〇五年、ゼノアに生る。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
彼の肉体に植物の繁茂し始めた歴史の最初は、彼の雄図を確証した伊太利イタリー征伐のロジの戦の時である。彼の眼前で彼の率いた一兵卒が、弾丸に撃ち抜かれて顛倒てんとうした。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
塑造科の先生は長沼守敬先生で、伊太利イタリーからかえって日本でさかんに銅像の研究を進めておられた。
美術学校時代 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
一ヶ月後には伊太利イタリーの海岸から新婚旅行の絵ハガキでも送る事になるだろうよ。然し運ってやつは不思議なものさ。煙草屋の店先で君に会おうとは思掛けなかったよ。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
茶リネの西洋曲馬というのは伊太利イタリー人チャリネのひきゆる二十数名の外人一座、八月に来朝し、秋葉原に興行して、東京中をわかせるような大評判をとっているのである。
明治七、八年の頃だったと思いますが、尾張町おわりちょうの東側に伊太利イタリー風景の見世物がありました。
銀座は昔からハイカラな所 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
伊太利イタリー中古フロレンチン式に、装飾されてあるこのギャレリーは、全く立派なものでした。
かくて一九一七年に至り、伊太利イタリーの数学者で希臘ギリシア数学史の一方の雄であるローリア博士が、日本の数学史を論じたことがあるが、その中には私の書いたものが引用中の大半を占めて居る。
数学史の研究に就きて (新字新仮名) / 三上義夫(著)
「この季節は夜明けが遅いもんだから、ヴァロルブへ着いてもまだ暗いのに、彼駅あすこでは税関の手続きがあるので、三十分間の停車です。貴方がたは多分伊太利イタリーへいらっしゃるんでしょう」
伊太利イタリーは自分の国語はラテン語の系統を引いているものであるから、これを使用せよと主張し、西班牙スペインもまた同国語は南米十ヶ国に行われ、使用の範囲が広いからこれを採用せよといい
英語はもとより、仏蘭西フランスをどうの、独乙ドイツをこうの、伊太利イタリー語、……希臘ギリシャ拉甸ラテン……
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ことに最近は独逸ドイツのナチズムや伊太利イタリーのファッシズムの大波に上下をあげてもまれている時代であり、その影響えいきょうにくらべると、まだ一か月にも足りない友愛塾生活の影響など物の数ではなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
短躯で、禿頭で、鼻が小さく鉤形かぎがたに曲つてゐて、眼の輪郭がはつきりしてゐて、見てゐると彼の日に燒け土と垢で汚れた風貌の中から、何となく伊太利イタリーの農夫のやうな印象が現はれて來るのである。
南方 (旧字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
そうしてそのお礼にと云って、持っていた伊太利イタリー革の手提の中から一本のネクタイピンを——とり出すと、私がどんなに断っても、自分の手で私のネクタイにさしてくれると云い張って聞かないのだ。
(新字新仮名) / 渡辺温(著)
長くしなしなして、ちょっとの風にも物思わしげに揺れたり屈んだり伸びたりするアカシヤの並木がチェホフの書斎の伊太利イタリー窓から見える。花壺の中の緑の仙人掌さぼてんが庭にある。遠くの海に艦隊がきた。
シナーニ書店のベンチ (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
すると、シイカがきゅうに、ちょうど食べていたネーブルを指さして、どうしてこれネーブルって言うか知ってて? といた。それは伊太利イタリーのナポリで、……と彼が言いかけると、いいえ違ってよ。
(新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
まず、あなたは、いま、国外に追放されている反ファシストの連中が、続々伊太利イタリーに潜入しつつある事実を、思わなければなりません。
踊る地平線:10 長靴の春 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
我々の聴き馴れたドイツ風の演奏に対する伊太利イタリー風の演奏の面白さと言うよりは、むしろこの人の音楽的気稟きひんの影響ではあるまいかと思う。
父を乗せた自動車が、で去った後の車寄に附けられた自動車は、荘田がついこの間、伊太利イタリーから求めた華麗なフィヤット型の大自動車であった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)