串談じょうだん)” の例文
才気をもった姉さんは捨吉の腹の底をえぐるようなことを言った。姉さんは半分串談じょうだんのようにそれを言ったが、思わず捨吉は顔を紅めた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
主人の中川も気の毒になり「大原君、串談じょうだんだよ。気にかけ給うな。サア今度の料理も珍物だから試してくれ給え」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「パパさんは、串談じょうだんなんですよ」母様はあなたを胸に抱きよせて
少年・春 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
「お前はもう子供を欲しいとは思わないか」そんな串談じょうだんの中にも、岸本は節子の独身で居るのをあわれむ心から言って見た時、彼女は首を振って
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
主人は妙な顔をして、エ、何へ包みます、紙へ包めとおっしゃるのですか、串談じょうだん言ってはいけません、紙へ包めばアイスクリームが融けてしまいますと笑っている。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
串談じょうだんじゃないぜ。あの上着は十八円もかかってるよ。そんなら初めから洋服なぞを造らなければいいんだ。」
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
友達の借金なら貴郎あなたかぶる訳もありますまい。貴郎も少しは手伝ってお遣いなすったのでしょうと串談じょうだんのように気を引いてみましたけれども決してそうでないといいます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
お繁が死んでくれて、かえって難有ありがたかったなんて、串談じょうだん半分にも僕はそんなことをお雪に話しましたよ……ところが君、今度は家のやつが鳥目などに成るサ……
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
生憎あいにく娘は何とも答えず主人が串談じょうだん
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
私は足掛け五年近くも奉公していた婆やにも、それから今のお徳にも、串談じょうだん半分によくそう言って聞かせた。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この自分から言出した串談じょうだんには、三吉は笑えなく成った。彼の母は、死んだものまで入れると八人も子供を産んでいる。お雪の方にはまた兄妹が十人あった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「何だか俺は好い年齢としをして、中学生のるようなことでもてるような気がして仕方がない」と岸本は言った。「節ちゃん、ほんとに串談じょうだんじゃ無いのかい」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いえ、串談じょうだんでなしに。火事は江戸の花——だれがあんなことを言い出したものですかさ。そのくせ、江戸の人くらい火事をこわがってるものもありませんがね。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おなかの中で、「なにも俺は、無理に一緒に成れと言ったんじゃ無いんだ——串談じょうだん半分に、一寸そんなことを言って見たんだ——お前達はそうって了うから困る」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「姉さん、どうです」と三吉は串談じょうだんのように、「貴方の方で宗さんを引取っては。私の方から毎月の分をげるとしたら、その方がかえって経済じゃ有りませんか」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その時、銀貨二つを風琴オルガンの上に載せたもどりがけに、私は次郎や三郎のほうを見て、半分串談じょうだんの調子で
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
戦争を遊戯視し、まるで串談じょうだんでもに行く人のようにして親しい家族や友人に停車場まで見送られたというブロッスの教授の子息むすこさんのことも彼は聞いて知っていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「今度誘いに来たら、断っちまえ。——吾家うちへ入れないようにしろ——真実ほんとに、串談じょうだんじゃ無いぜ」
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この自分から言出した串談じょうだんには、私は笑えなくなった。三人の子供ですらこの通り私の家では持余している。今からこんなに生れて、このうえ出来たらどうしようと思った。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「一年の御稽古けいこでも、しばらく休んでいると、まるで当らない。なんだか串談じょうだんのようですナ」
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
不幸な姉をあわれむ心から、三吉はこんな串談じょうだんを言出した。お種はもうブルブルからだを震わせた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その時、福島の幸兵衛も庄屋らしいはかまひもを結んでいたが、半分串談じょうだんのような調子で
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
僕の家へ来たばかりの時分はどうも未だ調子が本当で無かった——僕が姉さんに、郷里くにへ帰ったら草鞋わらじでも穿いて、薬を売りに御出掛なさいなんて、そんな串談じょうだんを言ってるところです
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
とおげんは半分串談じょうだんのようにひとりでそんなことを言って見た。耳に聞く蛙の声はややもすると彼女の父親の方へ——あの父親が晩年の月日を送った暗い座敷牢の格子の方へ彼女の心を誘った。
ある女の生涯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
串談じょうだんらしく高瀬が言うと、お島は縁側から空を眺めて
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)