一声ひとこゑ)” の例文
旧字:一聲
旗野の主人あるじ血刀ちがたなひつさげ、「やをれ婦人をんなく覚めよ」とお村のあばら蹴返けかへせしが、くわつはふにやかなひけむ、うむと一声ひとこゑ呼吸いきでて、あれと驚き起返おきかへる。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「そはけがたき事」とうちかたぶき打かたぶきするほどに、又も一声ひとこゑ二声ふたこゑうちしきれば、「あれが声を郭公ほとゝぎすとや。いかにしてさはおぼしつるぞ、いとよき御聞おんききざま」
すゞろごと (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「をぢさん」と一声ひとこゑを発することを敢てしたのは、女主人イレエネ・ホルンであつた。
祭日 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
ねむたげな桜並木なみき一声ひとこゑ汽笛きてきの音がつつ走りけり
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
一声ひとこゑに横たふや時鳥ほととぎす
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「うむ、」と一声ひとこゑだう枯蘆かれあしこしおとして、ほとんど痙攣けいれんおこしたごとく、あし投出なげだしてぶる/\とふるへて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『……言附ことづけは、いぬでは不可いかぬ。時鳥ほとゝぎす一声ひとこゑかせろ。』
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
坊主ばうずが、たがひ一声ひとこゑうぐひすふくろふと、同時どうじこゑ懸合かけあはせた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)