鶴松つるまつ)” の例文
隣家の伏見家からは少年の鶴松つるまつも招かれて来て、半蔵の隣にすわった。おふきが炉で焼く御幣餅の香気はあたりに満ちあふれた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大島では笠利かさり鶴松つるまつという女が、さして古い頃の人でないにもかかわらず、島の一個の和泉式部として讃歎せられ、その吟咏ぎんえいは今も記憶せられている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
間もなく、半蔵のあとを追って、伏見屋の鶴松つるまつが馬籠の宿しゅくの方からやって来た。鶴松も父金兵衛きんべえ名代みょうだいという改まった顔つきだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「あれで金兵衛さんも、大事な子息むすこさん(鶴松つるまつ)は見送るし、この正月にはお玉さん(後妻)のお葬式まで出して、よっぽどがっかりなさるかと思いましたが——」
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ちょうど今の隣家の鶴松つるまつ桝田屋ますだや子息むすこなどと連れだってかよって来るように、多い年には十六、七人からの子供が彼のもとへ読書習字珠算などのけいこに集まって来た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)