髷物まげもの)” の例文
髷物まげもの小説を特色づける夢とが、私を鼓舞こぶしてこの驚くべき生産を遂げさしたことだろうと思う。
それというのが新派が今まで髷物まげものをやって当ったためしがない、例えば高安月郊氏の江戸城明け渡しその他、何々がその適例だ、こんども享保年間の義民伝まがいのもの
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
従来の型の如き型を破った髷物まげもの小説は、僅かに、指折ってみて、中里介山の「大菩薩峠」(都新聞)、国枝史郎の「蔦葛木曾桟つたかずらきそのかけはし」(講談雑誌)、白井喬二の「神変呉越草紙」(人情倶楽部)
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
私は銭形の平次に投げ銭を飛ばさして、「法の無可有郷ユートピア」を作っているのである。そこでは善意の罪人は許される。こんな形式の法治国は、髷物まげものの世界に打ち建てるより外にはない。
その意味において、髷物まげものの捕物小説のよさはいろいろの制約があるためだと私はいおうとしている。そこにはピストルも無ければ、自動車も電話も無く、青酸加里も無ければモルヒネも無い。