風貌ふうばう)” の例文
總髮に無精髯ぶしやうひげ、眼が細くて蟲喰ひ眉で、鼻がシラノ・ド・ベルジユラツク風で、唇の厚い、首の短かい、まことに怪奇な風貌ふうばうです。
丸きり六年はぬのだが、その風貌ふうばうといひ、その態度といひ、更に昔に変らぬので、これを見ても、山中の平和が、直ぐ自分の脳に浮んだ。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
その中でもN君は一見して、山の手の堅い家に育つた、健全な青年の風貌ふうばうを備へてゐた。彼が今時の青年に珍らしく、童貞である事も前に聞いてゐた。
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
ゆき子が食堂へはいつて行つても、別に、ゆき子の方を注意するでもなく、ゆつくり孤独をたのしんでゐるやうな茫洋ばうやうとした風貌ふうばうをして、酒を飲んでゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
昔のおもかげもないやうな風貌ふうばうの変化である。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)