阿斗あと)” の例文
「その折、玄徳の一子、阿斗あとをも連れて、呉へ下ってこられたなら、あとはもう此方のものです。それを人質ひとじちに、荊州を返せと迫れば」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、妊娠中に夫人が、北斗星を呑んだ夢を見たというので、幼名を「阿斗あと」とつけ、すなわち劉禅りゅうぜん阿斗あとと称した。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その声に、夫人のふところに眠っていた幼君の阿斗あとが泣きだした。侍女たちは怖れてみな片隅に打ち慄えている。しかし、さすがに夫人は気位きぐらいが高い。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして阿斗あとの体を、趙雲の手へあずけると、急に、張りつめていた気もゆるんだか、がくとうつぶして
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
趙雲の武運がつきたか、ふところにある阿斗あとの薄命か。——あッと、趙雲の声が、突然、ほこりにつつまれたと思うと、彼の体は、馬もろとも、野の窪坑くぼあなにおち転んでいた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では、当陽の戦いに、長坂ちょうはん和子わこ阿斗あとを救ったというあの名誉の武将か」と、いった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さもあろう。では張飛。ご辺は甘夫人と糜竺を守って、君の御座所まで送りとどけてくれ。それがしは、またすぐここから取って返して、なお糜夫人と阿斗あとの君をおたずね申してくる」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なぜ、そなたは、阿斗あとを抱いてこなかったのだ」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)