長屋建ながやだて)” の例文
砂漠のような埋立地や空地あきちのところどころに汚い長屋建ながやだての人家がごたごたに寄集ってはまた途絶えている光景は、何となく知らぬ国の村落を望むような心持である。
元八まん (新字新仮名) / 永井荷風(著)
東京へ来てからは、性来の吏才りさいが役にたって、大蔵省の判任官を奉じ、長い間煙草たばこ専売局に勤めていた。妻と男の子一人、女の子三人の六人暮しで、住宅は麹町下六番町十番地の長屋建ながやだてであった。
友人一家の死 (新字新仮名) / 松崎天民(著)