遠国おんごく)” の例文
旧字:遠國
何でも、中村菊之丞一座というのは、上方かみがたで、遠国おんごくすじの田舎まわりをしていた緞帳どんちょうだったのが、腕一本で大坂を八丁荒しした奴等だということだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
彼めが家の職をぎとって、遠国おんごくへ流罪申し付きょうと思うている。泰親にもそれほどの覚悟はあろう。たとい頼長が捨て置いても、兄の関白殿がゆるさりょう筈がない。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大勢の子供をみんな遠国おんごくへ出してしまうというのは、なにか仔細がなければならねえ。そのうちには悪い病気の筋がある。おそらく癩病か何かの血筋を引いているのだろう。
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
遠国おんごく同士の約束は甚だ不安のようではあるが、義理の固い才蔵は万一自分に病気その他の差し支えがある場合には、差紙さしがみを持たせて必ず代人をのぼせることになっているので
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そんな遠国おんごくの者は住んでいねえようだが……。いや、ある、ある。この近所で荒物屋をしているお鎌という女……。それ、さっきも話した通り、古井戸の死骸を最初に見つけ出した女だ。