虎斑とらぶち)” の例文
机の兩端には一つ一つ硯が出てゐるのであつたが、大抵は虎斑とらぶちか黒の石なのに、藤野さんだけは、何石なのか紫色であつた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
釣糸の先に引っかかった一匹の虎斑とらぶちの猫を、ここに書くさえ気味のわるいアラユル残忍な方法でイジメつけながら、たまらないほど腹を抱えて笑い興じるのであった。
冗談に殺す (新字新仮名) / 夢野久作(著)
虎斑とらぶちのその横腹が呼吸の度に静に波打ってるのを、昌作は暫く見ていたが、やがてまた顔を上げて、障子の硝子から外に眼をやりながら、底に力無い苛立ちを含んだ陰鬱な夢想に、長い間浸り込んだ。
野ざらし (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
猛獣のような虎斑とらぶちいろどられている。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)