蘭瞼らんけん)” の例文
一足……また、ズッと迫ってきたが、こんどはお綱、うしろへ退かずに、きりりと蘭瞼らんけんべにを裂いた。が——声はかえって落ちついて
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身をかわしたが、片足ままにならぬ重蔵、思わず、よろりとなるのを、支え止めた千浪は、さッと美しい蘭瞼らんけんをいからせて
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きりっと吊りあがった蘭瞼らんけんが、周馬の軽薄な唇をひるまずに睨まえて
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御方の蘭瞼らんけんは剣のような鋭さで、その時じっと新九郎の顔を射て来た。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
依然たるにらめッ子。……ただ婆惜の蘭瞼らんけんがほんのりと酒に染まり、宋江も酔って沈湎ちんめんといるだけだった。いや夜も更けたし、宋江は帰るに家も遠く、進退きわまったともいえばいえる姿であった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)