むく)” の例文
『猫』の作者は、胃の悪い黒猫のやうに、座蒲団の上に円く胡坐あぐらを掻いて唯にやにや笑つてばかしで、別にむくれてゐる容子ようすもなかつた。芸妓達は各自めい/\色々な事を訊いたり、喋舌しやべつたりした。
さつきから肚の中で少しむくれてゐた、この年つ喰ひの惡戲者は、三度目の明りは磨るが早いか、すつかり燃え切らないうちに、さつさと放り捨ててしまつたので、燃殼の床にけし飛んだのを
西大寺の伎芸天女 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
その日も思つた程顔触かほぶれが集まらないので、お婆さんは徐々そろ/\むくれ出した。