耳語ささやき)” の例文
そうして宗助の顔をながめながら、泥棒よと耳語ささやきやった。宗助は文庫を渡してしまえば、もう用が済んだのだから、奥の挨拶はどうでもいいとして、すぐ帰ろうかと考えた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とて、金眸の耳に口よせ、何やらん耳語ささやきしが、また金眸がさきに立ちて、高慢顔にぞ進みける。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
夏の夜、この橋の上に立つて、夜目にもしるき橋下の波の泡を瞰下みおろし、裾も袂も涼しい風にハラめかせて、数知れぬ耳語ささやきの様な水音に耳を澄した心境ここちは長く/\忘られぬであらう。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)