終焉しゆうえん)” の例文
赤彦君の枕頭に目ざめてゐるものは皆血縁の者である。そして終焉しゆうえんに近い赤彦君を呼ぶこゑが幾つ続いても、赤彦君はつひに一語もそれに答ふることをしない。
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
然らば壽阿彌の終焉しゆうえんの家は誰の家であつたか。これはどうも師岡の家であつたらしい。「伯父さんは内で亡くなつた」と、石の夫は云つてゐたさうだからである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
次第にその終焉しゆうえんが近づいて来ると——忘れもしない初時雨はつしぐれの日に、自ら好んだ梨の実さへ、師匠の食べられない容子を見て、心配さうに木節が首を傾けた、あの頃から安心は追々不安にまきこまれて
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
廿七日の午前六時半ごろ、主治医と二人で診察すると、脈搏はもはや弱く不正で結代けつたいがあつた。息も終焉しゆうえんに近いことを示してゐた。そこで主治医の注意によりみんなが枕頭に集つた。
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)