睜開みひら)” の例文
漸くまどろみかけてゐた彼はハツと眼を睜開みひらき、そして黙つて耳を澄ましてゐた。風で折れた木の枯枝が窓の戸に当るのかなと思つた。しかし又コツ/\と叩く音は聞こえた。
或夜文一郎はふとめて、かたわらしている女を見ると、一眼いちがんを大きく睜開みひらいて眠っている。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
忽然として我れを忘れた歓喜と此世ならぬ陶酔との絶頂にあつた一同の顔は一斉に化石した如く蒼くこはばり、そして彼等は、ハツと一時に息をひそめて、睜開みひらいた視線を其方に向けた。